新制度で先発薬の自己負担が増加:ジェネリック医薬品の活用を考える

今月から、厚生労働省が導入した新しい制度により、特許が切れている先発薬を選択する患者の自己負担額が引き上げられた。対象となるのは抗アレルギー薬「アレグラ」や胃腸薬「ガスター」など、約1100品目にのぼる。後発薬が存在し、発売から5年以上が経過した先発薬や、後発薬の使用割合が50%以上の先発薬を選ぶと、後発薬との価格差の25%が保険適用外となり、その分が自己負担額に上乗せされることになる。

このことに関して自分なりの考えをまとめる。

後発薬と先発薬の選択:新制度の狙い

この制度の主な目的は、患者にジェネリック医薬品(後発薬)の使用を促し、全体的な医療費を抑制することにある。日本における後発薬の使用割合は、数量ベースでは80.2%に達しているものの、金額ベースでは56.7%にとどまっている。つまり、コスト削減のポテンシャルがまだ残されているというわけだ。

以下m3サイトの内容をもとに作成。

自己負担が3割の患者が抗菌薬「ジスロマック錠250mg」を3日間服用する場合、これまでは288円だった支払いが、新制度の下では351円に増えることになる。一方、ジェネリックである「アジスロマイシン錠250mg」を選べば、支払いは162円で済む。医師が必要と判断した場合や、薬局に後発薬が在庫切れの場合には、新制度の対象外となるが、患者には後発薬の選択がより強く促される状況となっている。

https://community.m3.com/v2/app/messages/news/4934351

医療者として後発薬の活用に賛成

個人的には、後発薬の積極的な使用には賛成だ。医療費の抑制という観点から見ても、患者の負担を減らすためにも、後発薬を積極的に選択することは合理的だと感じている。

ただし、一部の薬剤については慎重な対応が必要だ。特に、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、抗うつ薬、抗てんかん薬などの精神科領域や神経科領域の薬剤に関しては、後発薬と先発薬で効果の差異があるかどうかは、個人差が大きいのではないだろうか。

経験上、患者によっては薬の見た目や名前が変わることで心理的な影響を受け、効果が変わったと感じることが少なくない。

重要なのは信頼関係と説明

医療者として、後発薬と先発薬に効果の差がほとんどないことを理解していても、実際に薬を服用する患者にとっては、薬が変わること自体が不安要素になることがある。特に、薬の形状や色、名前が変わることで「違う薬を飲んでいる」という感覚が生まれ、それが実際の効果にも影響すると考える患者も多い。

そのため、処方をする際には、医療者側が適切な説明を行い、患者との信頼関係をしっかりと築くことが重要になる。単に「後発薬に変えた方が安い」というだけでなく、後発薬が安全で効果的である理由を丁寧に説明し、患者が納得した上で選択できるようなサポートが求められる。

新制度をどう受け止めるか

今回の制度改正によって、患者には後発薬の選択が一層促されることになるだろう。これが全体として医療費の抑制につながることは期待されるが、同時に、患者の不安や混乱を最小限に抑えるためのコミュニケーションが医療者には必要だ。適切な説明を行い、患者が自身の治療に安心して取り組める環境を整えることが、今後の医療の質を維持する上で欠かせない。

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Dr.こうじろう
1992年生まれ、関西出身。幼少期の喘息経験から医療に興味を持ち、地元大学の医学部を卒業後、研修医を経て総合診療医として地域医療に貢献。医療と介護の連携を重要視し、経済やマネジメントの知識も学びつつ、「最適化された医療を提供する」ことをモットーに従事する。趣味は筋トレ、テニス、ウイスキー収集。医療に関するニュースや日々の診療ですぐに実践できる知識を発信するブログ。