はじめに
二次救急に携わる医療現場では、ショック状態の患者が搬送されることは珍しくありません。この記事では、ショックの定義から、バイタルと身体所見をもとにした鑑別方法、そして超音波を用いた評価法(RUSH exam)まで、実践的な内容をわかりやすく整理しています。
1. ショックとは?
ショックとは、全身の循環不全により組織の酸素供給が需要を満たせなくなり、生体機能に障害が生じる病態です。
以下のような臨床所見からショックを疑います。
- 意識障害、冷汗、皮膚の湿潤や蒼白
- 頻脈(時に徐脈も)
- 毛細血管再充満時間(CRT)>2秒
- 収縮期血圧<90mmHg、脈圧<30mmHg、平均動脈圧<60mmHg
2. 身体所見とバイタルからのショックの鑑別
分類 | 手足 | 頸静脈 | 呼吸数 | 心拍数 | 主な原因疾患 |
---|---|---|---|---|---|
心原性ショック | 冷たい | 怒張 | 増加(クラックル聴取) | 上昇または徐脈 | 心不全、不整脈、虚血性心疾患など |
循環血液量減少性ショック | 冷たい | 虚脱 | 正常 | 上昇 | 出血、脱水など |
閉塞性ショック | 冷たい | 怒張 | 増加 | 上昇 | 緊張性気胸、心タンポナーデ、肺塞栓など |
血液分布異常性ショック | 暖かい | 正常 | 増加 | 上昇(神経原性では低下) | 敗血症、アナフィラキシー、神経原性など |
3. ショック鑑別のアルゴリズム
心拍数チェック
- 徐脈:神経原性ショック、徐脈性不整脈(AVB、SSS)など
- 頻脈:次へ進む
身体初見で頸静脈怒張をチェック。
怒張があれば、心原性もしくは閉塞性ショックを想起する。
怒張がなければ、血液分布異常もしくは循環血液量減少性ショックを想定する。
前負荷(Tank)評価
- 増加:閉塞性ショック
- 減少:次へ
血管抵抗(Pipe)評価
腹腔内出血をFASTで評価+大動脈を評価
4. RUSH examでのショック評価
**RUSH(Rapid Ultrasound in Shock)**は、以下の3要素でショックの原因を評価するプロトコルです。
分類 | Pump(心機能) | Tank(循環血液量) | Pipes(血管) |
---|---|---|---|
循環血液量減少性 | 心室狭小化、過収縮 | IVC虚脱、胸腔腹腔内液体貯留 | 大動脈瘤、解離など |
心原性 | 心室拡張、収縮不全 | IVC拡張、肺水腫、胸水 | 特記なし |
閉塞性 | 心タンポナーデ、右室拡張、塞栓 | IVC拡張、気胸所見 | 下肢静脈血栓など |
血液分布異常性 | 敗血症初期:過収縮 後期:収縮不全 | IVC虚脱~正常、膿胸や腹水 | 問題なし |
おわりに
ショックの早期認識と迅速な原因検索・治療は、患者の予後に大きく関わります。本記事を通じて、現場で役立つショック鑑別の視点を身につけていただければ幸いです。RUSH examをはじめとしたベッドサイド評価を活用し、効果的な初期対応につなげてください。
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