失神(意識消失)の概要とカルテテンプレート

はじめに

失神は大脳全般の韓流低下による突然の一過性意識消失発作である。短時間で自然に完全に意識が回復することが特徴である。原因は多岐にわたるが、多くは予後良好なものであるが、中には心原性失神のように晴明に危険を及ぼす原因が隠れている。そのため、救急外来で診断がつかなくとも、可能な範囲で考えうる疾患を想定して、それに対応する症状や経過があったのかを聴取し、必要な検査で可能な限り危険な原因を除外する必要がある。

失神で鑑別に上がる疾患

SYNCOPE(失神)の語呂で覚える!!

Ssituation状況性、排尿、排便、咳
Yvasovagal血管迷走神経性
Nneurological 神経障害性、自律神経障害
Ccardiovascular心血管性、不整脈、弁膜症、
Oorthostatic起立性低血圧
Ppsychogenic精神心理的、過換気
Eeverything elseその他、主に薬剤性
失神を起こしうる鑑別疾患

特に重要なこと

本人は覚えていないこともあるため目撃者がいれば必ず状況を聞き出す。

突然発症か前駆症状があるか。突然気づいていたら倒れていたというエピソードもしくは失神の前に同期がしたという病歴は高リスクである。

呼吸困難=肺塞栓

胸痛=ACS

動悸=不整脈

神経学的な局所症状=TIA

嘔気や発汗=神経調節性失神

排便後や咳嗽後=状況失神

労作時=心室頻拍や大動脈弁狭窄症、HCMなど

臥位で突然=不整脈

確定は禁物だが、エピソード別に考えやすい原因がある。

入院判断のスコア

San Francisco Syncope ruleがある。

1つでも該当すれば、7日以内の重大なイベントが起こるリスクが高いとされる。(感度96%、得意度61%)

(Derivation of the San Francisco Syncope Rule to predict patients with short-term serious outcomes. Ann Emerg Med. 2004 Feb;43(2):224-32. PMID: 14747812)

前向きコホート研究。(失神による来院684件のうち79件で患者が深刻な結果を経験した。50の予測変数について検討したところ、単変量解析で26の変数が深刻な結果と関連していた。心電図に異常がある患者、息切れの訴え、ヘマトクリット値30%未満、収縮期血圧90mmHg未満、うっ血性心不全の既往歴を考慮するルールが、感度96%(95%信頼区間[CI] 92%から100%)、特異度62%(95% CI 58%から66%)であった。このコホートに適用した場合、このルールは入院率を10%減少させる可能性がある。)

CCongestive heart failureうっ血性心不全の既往
HHt<30%
EECG心電図異常
SShortness of breath息切れ
SSystolic blood pressure収縮期血圧<90mmHg
失神の入院判断

心電図で何を見るか?

・虚血性変化(ST変化、異常Q波)

・洞徐脈や洞停止

・モビッツ2型または3度房室ブロック

・交代性脚ブロック

・心室頻拍や発作性上室性頻拍

・非持続性心室頻拍

・二束ブロック

・QT延長や短縮

・Brugata型心電図

・イプシロン波(不整脈原性右室心筋症)

・δ波(PQ間隔短縮)

徐脈や心停止による意識消失では3−5秒でめまいなどの症状が出現し、5〜10秒で失神を起こしうる。

カルテテンプレート

【主訴】意識消失

【現病歴】

前駆症状:

目撃者:

外傷の有無:

ROS

呼吸困難 胸痛 動悸 麻痺症状 発汗 咳嗽 黒色便・血便

【既往歴・併存疾患】

精神疾患、過換気の既往、糖尿病、神経疾患の既往:

他:

【常用薬】

降圧薬、βブロッカー、抗不整脈薬、向精神薬(QT延長起こしうる)はあるか:

【生活歴】

000人暮らし 同居する家族や様子を見る人がいるか

飲酒: 喫煙: ADL: アレルギー:

【現症】

General Appearance:良好、非切迫、切迫

バイタル:

起立試験 0分 3分

(起立後3分の測定で収縮期血圧が20mmHg以上、拡張機血圧が10mmHg以上低下、心拍数が10~20bpm以上の上昇、もしくは症状出現。いずれかがあれば陽性で、脱水・出血・薬剤性などを検討)

呼吸音: 心音:心雑音特に大動脈弁狭窄症の収縮期駆出性雑音がないか

局所神経症状:

モニター心電図は診察開始時より装着し各種検査が出るまでつけてモニターしておく

【検査所見】

12誘導心電図:

(確認項目)HR 調律 PQ間隔 異常Q波 QRS波(脚ブロック 2束ブロック以上ないか Brugata型ではないか) イプシロン波 ST変化 陰性T波 QT間隔 

外来モニター心電図:

血液検査

血算、生化学、電解質、CK、CK-MB、TropT、肺血栓塞栓症を疑うならDダイマー(ただし陽性なら造影CTを撮像するつもりで)

経胸壁心エコー

アシナジー、心機能、駆出率、肺高血圧(TRの評価、Dーshapeがないか)心筋肥大(肥大型心筋症が疑わしくないか)、弁膜症(大動脈弁(流速や弁口面積))、IVCで脱水が疑われないか

頭部画像検査

(神経症状があった場合など中枢神経性の失神が疑わしい場合)

頭部CTもしくはMRI

入院か帰宅かの判断

基本的にはケースバイケースで、以下を参考に総合的に判断。

1️⃣診断が可能+危険な失神ではない=帰宅

2️⃣診断が可能+心原生など危険な失神が疑われる=入院、追加精査、専門医コンサルト

3️⃣診断が困難+San Francisco Syncope ruleなどで高リスク=入院、追加精査

4️⃣診断が困難+San Francisco Syncope ruleなどで低リスク=帰宅、必要に応じて外来通院

最終的に悩ましいのは、3️⃣のようなケースで入院をさせて経過観察するかどうか。原因がわからないものに対してはどうしても入院させて主治医として経過観察するかどうか、葛藤が生まれるだろう。

そのため入院ベッドの状況や、患者自身が家族の助けがあるか、入院を希望しているかなど複合的な要素が関係すると思われる。ただ原因がわからないから、帰ってもらうは絶対にNGだ。

ただ実際の現場では「おそらく迷走神経反射だろう。」として原因がそれほど分かっていないのに帰宅させている例も少なくないのではないか。

原因が不明でリスクが低くない症例に関しては、経過観察という理由だけでも入院させることが望ましい。どんなに検査を加えたところで、原因がわからない場合もある。そのことを説明する必要がある。

患者や家族には「診断が確実には難しいこと」「入院の経過観察によって致死的なことが起こりうる可能性は減ったがそれでも確実ではないこと」などを説明する必要があるだろう。

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Dr.こうじろう
1992年生まれ、関西出身。幼少期の喘息経験から医療に興味を持ち、地元大学の医学部を卒業後、研修医を経て総合診療医として地域医療に貢献。医療と介護の連携を重要視し、経済やマネジメントの知識も学びつつ、「最適化された医療を提供する」ことをモットーに従事する。趣味は筋トレ、テニス、ウイスキー収集。医療に関するニュースや日々の診療ですぐに実践できる知識を発信するブログ。